管理費、修繕積立金等の滞納問題

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管理費、修繕積立金等の滞納問題

管理費とは

管理費は「管理員人件費,共用設備の保守維持費,共用部分の火災保険,清掃費」などに使用されます。

項目を見ていただくだけでもお分かりになられるかと思います,いずれも管理費の不足が端的に区分所有マンションの維持管理に影響してくるものばかりです。

修繕積立金とは

修繕積立金は,「計画修繕,不測の事故等による特別の修繕,建物建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査」などに使用されます。 

数年あるいは十数年単位で行う修繕のことを計画修繕と言い,たとえば外壁の修繕や給排水管設備の修繕などがこれに含まれます。

こちらの項目についても,スパンが長いものではありますが,多額の費用を要する項目であり,その不足が修繕等の不可能を生み,マンションの価値を下げることにつながっていきます。

先取特権による保護

これらの性質から,管理費,修繕積立金については法律上特別の保護が図られています。 

具体的には,これらの費用には「先取特権」と呼ばれる担保権としての地位が与えられています。

先取特権とは,抵当権者には劣後しますが,他の一般債権者に優先して,債権者からの弁済を受けられる権利を指します。

滞納費用を回収できないということが,マンション全体に,また,他の区分所有者全員に大きな影響を与えることから,法的な保護を与えることで,「回収できない」という事態が生じないような制度設計がされているということになります。

 

 

具体的な回収方法

①督促
管理費の滞納を確認した場合、まずは電話や書面、あるいは訪問の手段により督促をします。滞納が失念による場合にはこれらの手段で十分に回収を図ることができます。

なお、管理会社に委託している場合には、これらの督促手続きの一部を管理会社が担うことになります。
督促手続きについては、標準管理規約改正のページもご参照ください。


②先取特権による回収
 

先取特権は,区分所有権および建物の上に備え付けた動産上にその効力が及びます。

つまり,建物と建物の中にある動産類を担保に取っているということになります。

これらを強制的にお金に変えていくこともできますし,たとえば区分所有者が掛けている火災保険に基づく保険金や,賃借人に建物を貸している場合の賃料などを先取特権の実行として回収することもできます。

訴訟手続きが不要という点において大きなメリットがあります。


③裁判による回収

正攻法になりますが,裁判(少額訴訟,通常訴訟)等によって回収を図るということも考えられます。

先取特権による回収の場合には,対象となるのが建物および建物に備え付けた動産に限られることから,たとえば,当該区分所有者が他に有している不動産や勤務先からの給与債権などについては回収することができません。

裁判によって未回収債権を認める判決を受けた場合には,強制執行手続きの対象は当該建物や建物上の動産に限りませんから,より回収の見込むことのできるところから強制的に回収することも可能になります。先に述べたように,先取特権は一般債権者には優先しますが抵当権者には劣後します。そのため,対象となる区分所有部分が仮に売却されたところでそのほとんどが抵当権者の取り分になるというような場合には,先取特権の実行による回収は困難となります(後記のとおり次の不動産取得者から回収する機会は与えられます。)。

当該不動産以外のところから確実に回収でできる方法があるということであれば、訴訟で未納管理費の支払い認容判決を受けたうえで,当該専有部分以外の財産に対して強制的な回収を図っていくことを目標にすることもあります。


④区分所有法59条に基づく競売手続き

区分所有法59条は,ルールを守らない共同の利益に違反する者に対して,当該義務違反者が所有する専有部分の競売手続きを定めています。

先に述べた先取特権によっても競売手続きを行うことができますが,その場合には,抵当権者に劣後するために,抵当権者に売却代金を配当してもなお余剰が生じる場合でなければならないという制限があります(無剰余の場合には競売手続きが取り消されます。)。

区分所有法59条に基づく競売は,後述するように当該区分所有者の追い出しに主眼が置かれているため,無剰余の場合であっても競売手続きを進めることができます。

これがなぜ回収につながるか。

実は,区分所有法では,管理費等の未納分について特定承継人(要は購入者)にも滞納管理費等の支払い義務が承継されるとされています。そのため,滞納者ではない購入者からの回収を図る機会が与えられることになるのです。

保有財産の調査~標準管理規約別添3の解説より~

滞納管理費について債務名義(「債務名義」とは、確定判決などの、強制執行の前提となる文書を意味します。滞納管理費に関する債務名義の例として、滞納管理費を請求する訴訟で得た判決がこれに該当します。)を得た場合に、滞納者が任意に滞納状態を解消しなければ当該滞納者の財産に強制執行をかけることになります。

強制執行の対象の代表例として当該滞納者名義の預金口座があげられます。
実務上、預金口座を差し押さえるためには、金融機関名及び支店の特定が必要とされています(口座番号は不要)。ところが、管理組合には滞納者が有している金融機関名や支店名を把握できないことがほとんどです。

この点、標準管理規約別添3解説において、「(2)滞納者財産の調査」の項目では、「区分所有者間の同意を事前にとって銀行等から情報開示を得ることが考えられる。」とさらっと書いていますが、裁判まで起こされてもなお支払わないような人が、この金融機関への同意書を出すことは通常考えられないと言えます。 

この場合、一つは、「●●銀行●●支店」にあるかもしれないという前提で(空振りに終わることを覚悟の上で)差押えをかけるという方法があります。

もう一つの方法としては、差押えに先立ち、弁護士会照会という手段によって各金融機関に照会をかける(この人は口座を持っていますかという形)という方法があります。現実問題としては、この弁護士会照会をかけたとしても、個人情報を理由に回答が得られないということがあります。他方で、最近の報道でもあるように、法務省のほうで差押を容易にするための民事執行法改正の動きもあり、回答に応じる金融機関も増えてきています。

いずれにしても、個人の口座情報を特定するのは現時点ではなかなか困難と言えます。
このような場合には、区分所有法59条による競売等の手続きを検討するほうが良い場合もありますので、一度専門家にご相談されることをおススメします。

管理費滞納と破産

管理費には先取特権が認められていて、その効力は一般先取特権である共益費用の先取特権(民法307条)とみなされています(区分所有法7条2項)。つまり、一般債権者には優先するけれども、担保権者(抵当権等)には劣後するという扱いです。
ただし、破産法上は別除権者として扱われます(破産法65条)。これは、管理費等については、区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する(区分所有法7条1項)とされている関係上、あくまで性質は、特定の財産上に有する「特別の先取特権」であることが根拠とされます。
つまり、優先権の順位、効力については一般先取特権とみなされているけれども、破産法上は他の担保権者と同様に、別除権者として破産手続によらずに権利行使できるという扱いになります。
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