規約違反者、共同の利益違反者の問題

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規約違反者、共同の利益違反者の問題

ルールが適用される人たち

区分所有者間のルールを定めているのが,区分所有法という法律であり,法律で足りない部分を補い,自主的に作ったルールが管理規約と説明しました。 

 

当該ルールが適用されるのは,区分所有者及びその履行補助者(同居家族等)ですが,たとえば共用廊下の使用方法といった「使用」に関するルールについては,区分所有者から当該専有部分を借りている「賃借人」にも適用されます。他方,賃借人には管理費等の支払いに関するルールなどは適用されません。

ルール違反の具体的な問題例

さて,マンションの規模の大小にかかわらず,ルールから逸脱してしまう区分所有者の方はいらっしゃいます。先に述べた管理費の滞納の問題にしてもルール違反行為と呼べます。 

その場合に,管理組合としてできることは何か,そのために必要な手続きは何か,ということについて若干の説明を加えます。


①共用部分の使用方法に関する問題

たとえば,専有部分に付設されているベランダは,通常の場合には共用部分に分類され,管理組合が管理を行う場所とされます。

現実的には,構造からして当該専有部分を使用する区分所有者等に利用させるのが適当ですから,その場合には当該区分所有者等に対して「専用使用権」という権利が設定されることが通常です。

専用使用権は,あくまで管理組合の共用部分であるという前提のもとで,管理組合が当該区分所有者等に対して「専用」の使用権を設定するというものですから,第一次的には当該区分所有者等が管理を行うことになりますが,究極的には管理組合が管理を行う対象にはなります。

そのため,専用使用権が設定されているベランダも全くの自由に使用することはできず,多くの場合には,「通常の用法に従い使用する」などと用途が制限されています。

となれば,次に問題となるのは「通常の用法」の意味ですが,これは当該共用部分の性格であるとか,実際の使用方法がもたらす弊害などに照らして,許容される範囲であるかどうかという視点から総合的に判断されることになります。

共用部分に該当するベランダの場合,通常は隣家との境界が避難路として設置されていたり,上下階との関係で避難ハシゴが設置されていたりします。これらの設備は,まさにベランダが当該区分所有者等の自由にできるスペースではなく,管理組合の共用部分であることの根拠となっています。

したがって,これらの避難経路が確保できないような使用方法がなされている場合,たとえば,ベランダにゴミが敷き詰められていて避難経路の確保ができない場合や,エアコンの室外機を設置している場所が同じように避難経路をふさいでしまうような場合には,「通常の用法に従った」使用方法と評価することは困難であり,管理組合としては避難経路を確保するために,これをふさいでいる物品等の撤去を求めていくことになります。

 

②専有部分の使用方法の問題

以上の話を前提に考えれば,区分所有者等の持ち物である専有部分については各区分所有者等の自由使用が認められるということになります。

ところが実際には,一つの建物が各専有部分に区切られているというマンションの性質上,専有部分の完全な独立を認め難い面があります。

たとえば,壁や床などは,一定の部分までは専有部分ですが,躯体と呼ばれる建物の芯の部分になると専有部分とは解されません。

また,壁や床の一部が専有部分であるといっても,これらは通常,躯体と一緒になって建物の構造耐力を支えている構成部分ですから,これらに変更を加えることで建物全体の安全性への影響がないとは言い切れません。

したがって,多くの管理規約等では,専有部分に変更を加える場合であっても,理事長などに工事計画等を示し,許可を受けてから修繕等の工事に着工するという規定が設けられています。

また,先に述べた共用部分のゴミ問題に関連しますが,いわゆるゴミ屋敷と呼ばれる専有スペースにゴミをためてしまうような区分所有者等がいた場合に,専有部分だから何しても良いとは言い難い面があります。

専有部分にどれだけのゴミが存在しているかは,当該区分所有者等の協力が得られない限りは明らかになりませんが,当該専有部分から廊下に向かって虫がわき出ているとか,通常ではありえないような異臭を放っているなどの状況がある場合には,建物全体の価値に大きな影響を与えることになりますから,管理組合から当該区分所有者等に対してその是正を求めていくことになります。

仮に,当該区分所有者等がこれに応じようとしない場合には,後述するような専有部分の使用禁止や競売手続きを含めた法的措置を検討していくことになります。

 

 

具体的な対応方法

【管理規約違反行為に対して】

通常,管理規約には,管理規約違反行為に対して法的措置をとることができるという規定が設けられ,かつ,訴訟手続きについても管理者(通常は理事長)が行うことができる旨の規定が設けられています。

したがって,規約違反行為者に対しては,滞納管理費等の回収訴訟,共用部分の違反状態の是正を求める訴訟などが,総会決議なく行うことができるようになっています。


【区分所有法に定める対応方法】

区分所有法は,区分所有者の「共用の利益」を害する者に対して,次の措置をとることができると定めています。

①行為差止(停止)請求

②専有部分の使用の禁止

③専有部分の競売申立

④賃貸借契約の解除および賃借人に対する引き渡し請求

 

①違反行為の差止(停止)要求については管理規約違反の場合とほぼ同様です。訴訟手続きによる場合には,総会決議が必要とされていますので,管理規約において訴訟手続きの権限が管理者(理事長)に与えられている場合には,この区分所有法に基づいた請求を行うメリットはありません。


②専有部分の使用の禁止は,必ず訴訟手続きで行う必要があり,その場合には総会決議が必須となっています。専有部分の使用禁止は,専有部分の所有者であり,本来は専有部分を自由に使えるはずの人に対する大きな制約となることから,適正な手続きに乗せて審理しなければならないということになっています。

実際には,たとえば「3か月使用してはならない」といった形で期間が区切られ,期間満了後は再び使用できるということになりますが,それでも対象となる区分所有者にとっては大きな不利益となることですから,心理的にも大きなプレッシャーがかかり,違反行為の是正に向けた大きな力となります。


③専有部分の競売についても,必ず訴訟手続きで行う必要があり,その場合には総会決議が必須となる点は専有部分の使用禁止と同じです。

これは,区分所有者が持つ専有部分を強制的に売却し,当該区分所有者が当該マンションにはいられないようにする制度です。つまり,義務違反者をマンションから追い出す制度になります。

制度の説明でお分かりいただけると思いますが,非常に強権的な制度です。そのため,この制度で競売にかけられるのは,それ以外に全くもって手段が存在しないような場合に限られるということになります。認められた例としては,基本分野編でも記載していますが,当該専有部分が暴力団事務所として使用されており,組関係者が多数出入りすることで,近隣住民は恐怖心から日々通常の生活を送ることができないといった場合に該当するとされています。


④賃貸借契約の解除および引き渡し請求

これは,区分所有者ではなく,区分所有者から専有部分を借りている賃借人に対する請求になります。

契約の基本に立ち返れば,契約を解除できるのは当事者のみですが,区分所有者にこれを期待することができないといった場合に,違反行為者である賃借人を追い出せないのではマンションの価値は下がる一方です。

 

そこで,契約の当事者ではない管理組合が,区分所有者,賃借人間で締結された賃貸借契約を解除し,賃借人に対して専有部分の引き渡しを求めることで違反賃借人を追い出す制度として用意されています。有名なところでいえば,野ハトの餌付け,飼育をしていてほかの居住者の迷惑になっていた賃借人に関して,当該請求が認められた事例があります。

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