標準管理規約(単棟型)改正(2016/3)

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標準管理規約(単棟型)改正(2016/3)

標準管理規約改正

国土交通省住宅局よりマンション標準管理規約改正の通知がありました。
マンション標準管理規約とは,各マンション管理組合が管理規約を作成,変更する際に参考にする標準的な見本となるものです。
各マンション管理組合においても,マンションの個別事情や時代の流れなどによって管理規約を適宜変更していく必要があります。
今回の改正は平成23年の改正以来のものになりますが,まさに時代の流れにあわせて変更されていったものと言えます。

主な改正点

第17条(専有部分の修繕等)
⇒書面による承認を得なければならない場合についての明確化(1項),工事による影響が生じた場合の区分所有者の責任(6項),あらかじめ届出を要する事項(7項)など
第19条の2 (暴力団員の排除)
⇒貸与する相手が暴力団員ではないことの確約を取ること,管理組合の解約権の代理行使など 
第21条(敷地及び共用部分等の管理)
⇒災害等の緊急時における理事長の保存行為(6項)など
第23条(必要箇所への立入り)
⇒災害時の緊急時等における理事長の立入り権限(4項)
第27条(管理費)
⇒コミュニティ条項の削除
第32条(業務)
⇒コミュニティ条項の削除等
第35条(役員)
⇒外部専門家の役員登用
第36条の2(役員の欠格条項)
⇒欠格条項の創設
第37条の2(利益相反取引の防止)
⇒役員と管理組合との間の利益相反取引に対する規制
第38条(理事長)
⇒○ヶ月に1回の理事会への報告義務の創設(4項),管理組合と理事長との利益相反取引についての代表権を有しないことの確認(6項)
第40条(理事)
⇒管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実の発見時の監事への報告義務
第41条(監事)
⇒調査権限等の付与(2項),理事会への出席義務(4項),不正行為等に対する理事会への報告義務(5項),理事会の招集請求権限(6項)及び同招集権限(7項)
第52条(招集) 
⇒理事会招集請求に理事長が応じない場合の招集権限(3項)
第53条(理事会の会議及び議事)
⇒特別の利害関係を有する理事の議決不参加(3項)等
第54条(議決事項)
⇒災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等(1項10号)等
第58条(収支予算の作成及び変更)
⇒通常の管理に要する経費等についての報告義務の削除(4項)等
第60条(管理費等の徴収)
⇒管理費等の未納者に対する督促等の措置(3号)

その他,敷地売却決議についての追加などがあります。

標準管理規約(単棟型)コメント改正点

コメントに関しては,第46条関係③で述べられている価値割合による議決権割合の決定への言及が注目されます。
これまでは,住戸1戸につき1議決権あるいは共用部分の持分割合を基準として定められることが通常でした。
今回のコメント改正では, 
「単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく,専有部分の階数(眺望,日照等),方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として,議決権の割合を定めることも考えられる。」
と記述されています。
基準の設定が必要であり,それをどの程度客観的に定めることができるか,また,コメントでは新築時以降に環境の変化があった場合(前方に建物ができて眺望に変化がある場合など)には見直しを原則として行わないとされている点など,課題は多いように思われる。

改正点の解説~第35条(外部専門家の役員登用)~

管理組合員の高齢化などを背景として、管理組合役員のなり手不足が問題となっています。
また、生活様式の変化や住民の意識の変化などにより、マンション管理は複雑化してきています。そのため、マンション管理の担い手である役員人事に関して、外部専門家を選任する場合の定めが追加されています。
外部専門家を役員として選任できるようにするのか、従来どおり区分所有者に限定するのかは、各管理組合が現状にあわせて選択することになります。
外部専門家を役員等として選任する場合のパターンとしては次のようなものが想定されています。
①理事・監事、又は理事長(=管理者)に外部専門家を登用するパターン
従来の理事会に外部専門家を入れるイメージ。理事会が機能不全となっているような場合、大規模修繕等の専門的知識を活用する課題が存在する場合などが想定される。
②管理者に外部専門家を登用し、理事会で監督するパターン
従来の理事会の執行に関する役割を外部専門家である管理者に委譲し、理事会を監督機関に位置づける。大規模マンションなどが想定される。
③管理者に外部専門家を登用し、理事会は設けず、監査法人等による外部監査を委託するパターン
理事会を設けないことから監事や総会に監督機関としての重要な役割が求められる。チェック体制がやや弱いことから外部監査を設置することになる。


改正点の解説~第37条の2(利益相反取引の防止)~

改正により新設された条項です。
管理組合が外部との取引を行う際に、例えば、修繕工事を請け負うことのできる理事が受注するようなことがあれば、管理組合の理事としての面と工事を受注する事業者としての面とで、利益が相反することになります。
もちろん、この場合であっても、適正な取引が行われ、管理組合にっとっては通常よりも安い費用で工事を発注できることもありえます。ただし、抽象的には、理事が管理組合の利益を無視し、事業者としての利益を優先させる可能性は否定できません。そのために、改正標準管理規約では、利益相反取引を一律禁止するのではなく、「重要な事実を開示し、理事会の承認を得た場合」には有効に取引できるとしました。
ところで、この利益相反取引の防止規定は、会社法における取締役の利益相反取引の制限規定(会社法356条)とほぼ同趣旨と思われます。したがって、会社法における利益相反取引に対する理解・解釈及びこれまでに蓄積された裁判例等の考え方と一定程度はパラレルに考えることができるはずです。
会社法における利益相反の制限とパラレルに考えれば、利益相反取引について承認を受けずに取引を行えば、当該取引は原則として無効と解されます。ただし、間接取引(同条第2号の類型)の場合には、取引の安全を守るために、取引相手の認識(理事会決議に対する善意・悪意)によるという結論になりそうです(ただし、会社法で規定されているのとは異なり、利益相反取引を制限する規約が置かれているかは、各管理組合によるという違いがあります。)。
その他、事後的な承認で足りるかなどの論点もありますが、会社法上の解釈としては、事後承認があった場合には初めから有効となると解されています。
利益を追求する営利会社と管理組合とをすべての場面においてパラレルに考えられるかは検討の余地があると思われますが、会社法上の利益相反に関する裁判例等は多くの部分で参考にできると考えられます。

改正点の解説~第41条(監事)~

監事の権限が強化されています。
第2項では、報告請求権調査権が定められています。これらの権利が定められたことから、監事としては必要にこれらの権利行使をしながら業務及び財産の状況を調査することが求められます。
第4項では、必要な場合に限定されていますが、理事会に出席して意見を述べなければならない義務が課されています。
第5項では、不正行為等を認めた場合の理事会への報告義務を、第6項、第7項は理事会の招集請求等が定められています。
全体として、会社法における監査役(会社法381条)にかなり近い権限が定められています。
第2項については、会社法381条第2項、第4項については、会社法383条第1項、第5項については、会社法382条、第6項、第7項については、会社法383条第2項、第3項がそれぞれ対応しています。
監事を含む役員には、標準管理規約上誠実義務が課されていますが(規約37条第1項)、監事にできることが増えた反面、できることをせずに放置したと見られるような場面においては、監事の役員としての誠実義務違反を問われる可能性も十分に考えられます。 

改正点の解説~第60条(滞納管理費等回収)~

改正により管理組合の役割として、「納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。」と明記されました。
また、管理規約別添3において、「滞納回収のための管理組合による措置に係るフローチャート」が載せられ、同解説も整えられています。
やや難しい記載になっているとは思いますが、コンパクトにまとまっていますので、各管理組合において参照されるとよろしいかと思います。
同解説によれば、督促の手順として
1ヶ月目 電話、書面(未納のお知らせ文)による連絡
2ヶ月目 電話、書面(請求書)による確認
3ヶ月目 電話、書面(催告書)
4ヶ月目 電話、書面、訪問
5ヶ月目 電話、書面(内容証明郵便(配達記録付)で督促)
とあります。
 
滞納の理由は様々ですが、入金忘れや引落し口座の残高不足といった場合には、理事会から指摘すれば、比較的容易に滞納が解消されることが想定されます。
ところが、3ヶ月、4ヶ月となると、上記のような理由ではなく、別の滞納原因があると考えられます。
管理費等の滞納問題に対しては速やかに対応する必要があります。
仮に、1ヶ月あたりの管理費及び修繕積立金の金額が3万円とすると、3ヶ月の滞納で9万円、半年となると18万円になります。
入金忘れといった理由ではない区分所有者に対して、半年後に18万円を払ってくれといったところで、一度に用意できないということは十分に想定できます。一度に解消できなければ、毎月支払わなければならない3万円に加えて、滞納分を上乗せして回収しなければなりません。
これが2ヶ月や3ヶ月目であれば、6万円あるいは9万円ですから、一度に回収できる可能性も高まりますし、仮に分割で回収することになったとしてもその期間は短くて済みます。
以上のことを考えると、5ヶ月目で内容証明郵便という督促手順はやや遅い進行のようにも思います。
もちろん具体的には各管理組合の理事会で検討することになりますが、いずれにしても迅速かつ適切に回収に努めることが要請されます。
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